いのうえ

気まぐれに気になったことを拙く書いています。気が向いたらコメントしてくださ〜い!

宮川さん

 宮川さんは私が最近思う変な人ランキング第1位に君臨している。おめでとうございます。と言っても、私は彼の顔を写真ですら見たことがなく、フルネームと今はイタリアにいること、以外に何も知らない。たったこれだけの情報でも彼は何らかが異常であることが分かってしまうというのは、実際の姿は想像のしようがないくらいおかしい人なのかもしれない。

 

私は彼について2つしか知らないと述べたがもう1つ情報があった。彼には付き合っている女がいる。そして、その女に対し、私は日々必死になって殺意を閉じ込めている。もし、傷害罪が存在しなかったら側にある鈍器になりそうなもので気がすむまで殴っているだろう。私の強烈な彼女を痛ぶりたい、苦しめたいという気持ちを封印してしまうなんて、法律はまあ強靭な抑止力を保持しているものだ、と思わず感心する。

 

 私は彼女と同じ部屋に住んでいるが、ここ半年で交わした言葉は片手で数えて十分こと足りる。彼女と同部屋になったのは私の意思ではなく勝手に決められた不可抗力な事案なのだ。彼女はまずブスではないがかわいくもない。ただ、寝顔は気持ち悪いほどブスだった。特に椅子に座ったまま口を開けて寝ていた時の顔は、拷問の一種として不快な物体を見せられているのかと錯覚するほど悍ましかった。次に奴は生活音がうるさく、1つ1つの動作がいちいち大仰である。引き出しを静かに閉めることもできないし、マックのキーボードはビッタンビッタンと打たなければ気が狂ってしまうらしい。enterキーを押す時は精一杯の力を注入して、音を出すことに専念する。それが、彼女の哲学なのだと思う。カーテンの開閉も可能な限り素早く行い、最大限大きな音を出すように心がけている。あ、またenter キーの訓練やってるな。イヤホンをつけるのも耳に悪影響があるし、音質の低下を危惧し、そのまま流す。脳の新陳代謝が良いので私が側にいることは、出会って1時間もせずに忘れた。1人なので、大好きなメイちゃんの執事を見て声を上げて笑う。ありがたいことに、彼女のおかげでメイちゃんの執事の大体の粗筋が分かった。よく聞いているBBC やCNN も大音量で流してくれるのでリスニングの練習になっている。そして、何より素晴らしいのは足音。歩くときには、足の内側に力を入れて、スリッパを引きずるようにして歩く。そうすることで、より大きな彼女の音を響かせることができ、遠くにいても常に自分が存在していることを周囲の人間に知らしめることができるのだ。健康と美容のために遅くまで起きて、昼寝をすることは欠かせない。寝るのは必ず午前3時以降と決めている。私は彼女のおかげで毎日電気が付いたまま寝る特訓をさせて頂いています。ありがとうございます。また、汚いものを、私に触らせてくれる。お風呂やキッチン、部屋に髪の毛や埃が溜まってきたら、私が掃除をしていいことになっている。光栄なことに、髪の毛や埃は私の机やベッドの側に寄せてくれる。どうして、私がそれらを収集してることまで察知できるのか。きっと彼女は並大抵でない洞察力でもを持っているのだろう。

将来は外務省に入って難民を助けたいらしい。ほぼ無名のFラン大にいて、高く意識を保てるのは彼女の意思が強固で、自分のことより世界平和を祈り、常に他者を基準として生きているからだ。彼女の人間性が溢れ出している。その仕事は彼女以外に適任者など1人もいないだろう。学歴よりも、人格の方が仕事では大切だから、外務省には入れることが決まっている。彼女より優れた人など見たことがないのだから。入省したら、率先力となって解決策を提示し、実行に移して難民の救世主となるのだ。

 当初、宮川さんのことを変人呼ばわりしたが、こんなにも1ミリも仲良くない私のことを常時気にかけ、色々な機会を与えてくださったり、広い視野をもち学歴など当てにならない要素は一切考慮に入れない聡明で賢い彼女をパートナーとして選んだ彼はきっと素晴らしい男性に違いない。大好きなカップルとして応援しています。